ご注文は進捗ですか?

気になったことを結論が出ないまま置いたりしています。ときどき進捗も置く。

渦巻型銀河の形成

www.nasa.gov


渦巻型銀河の形成
磁場が新星が数多くある腕に沿って流線型に存在 
→重力が銀河内の物質のみならず磁場にも影響している(磁場が歪められている)
ex. M77
鯨座方向に4700万光年離れた渦巻型銀河でその中心部のブラックホールは銀河系のそれの2倍ほどの質量がある。
SOFIAの最新機器を用いたところ,磁場が腕に沿って流線型にあることが観測された。磁場は直径24000光年の巨大な腕に沿うように存在する。

この事実は,density wave theory*1を支持するものであり,どのように渦巻型銀河の渦巻が形成されるのかを解明する鍵になる。

今回の結果は遠赤外線(89ミクロン)で磁場対して垂直に存在する銀河のダスト粒子を捉え,それを基にして磁場の形や方向を推測して得られたものである。
このように遠赤外線による観測は非常に有用だが,これは遠赤外線が散乱した可視光や高エネルギー粒子による電波等によってかき乱されることがないためである。

人間はうつになりやすく進化したことがある???

今回はびっくりニュースです。
人間の進化の過程において鬱傾向の方向へ向かったことがあるということが示唆されたトいうのです。
今回の主役は性格や個性に影響を与えるVMAT1*1*2で、人間の進化の過程の中でこの遺伝子の変異がうつ傾向への進化に関係してきます。

research-er.jp

概要

  • 人類の進化の過程で生じたと考えられる5つのVMAT1タンパク質を再現し,神経伝達物質の取り込みを比較。
  • 取り込みの低下を確認したことでVMAT1遺伝子の機能的変化を示し進化の過程で鬱になりやすい方向に進化した可能性が示唆された。

これまでの研究

  • 人類の進化初期にVMAT1遺伝子の

130番目 グルタミン酸(Glu)→グリシン(Gly)
136番目 アスパラギン(Asn)→スレオニン(Thr)
へ進化したことがわかっている。ただし,この変異がVMAT1タンパク質の神経伝達物質取り込みに与えた影響は不明。

  • さらに,現代人のなかには,

136番目 イソロイシン(Ile)
のタイプの人間がいる。Thr型の方がIle型に比べて鬱や不安傾向が強い。先行研究によると,Thr型はIle型より神経伝達物質の取り込み能力が低い。

今回

  • チンパンジーとの共通祖先から人類の進化の過程で生じた可能性がある5種類のVMAT1 タンパク質を再現し神経伝達物質の取り込みを比較。
  • 結果,人類の進化初期において,取り込み能力が低下したことが明らかに。130番目のグリシン及び136番目のスレオニンへの変異は人類の進化初期に鬱や不安傾向が強まる方向に進化したことを示唆。
  • 一方で抗不安傾向を示すIle型は頻度も増したことから,現在では過去の鬱・不安傾向への進化とは異なる方向へ進化している可能性がある。つまり,過去と現在では進化に対して異なる選択圧がかかっている。

*1:モノアミン神経伝達物質セロトニンノルアドレナリン・アドレナリン・ヒスタミンドーパミンなど)のうち,ヒスタミン以外を輸送する。小胞モノアミントランスポーター。精神刺激薬(コカイン・メチルフェニデートメタンフェタミンアンフェタミンなど)の標的分子の一つ。VMAT1 はセロトニン輸送効率が特に高い。

*2:小胞モノアミントランスポーターはH+との交換輸送によりモノアミンを小胞内に取り込み貯蓄。モノアミン神経伝達物質は認知情動機能における重要な要素である。 bsd.neuroinf.jp

ピンクノイズのお話。

今回は騒音とピンクノイズ の話。
読んだ論文はこちら。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasj/61/7/61_KJ00003470145/_pdf/-char/ja

ではいってみよー。

ピンクノイズ とは

カラードノイズの1種でパワーが周波数に反比例する音のこと。同じ周波数での光はピンク色に見えることからこの名前で呼ばれている。1/fノイズと呼ばれることもある。

実験の概要

これまでの研究

これまでの研究で、記憶精神作業中において、無意味雑音は時間平均音圧レベル*1の低下とともに「うるさい」という心理的印象も低減されるが、有意味雑音は心理的印象がそれほど改善しなかった。
この結果から、有意味雑音を無意味雑音でマスキングすれば「うるささ」を改善できるのではないかという発想に至る。
そこで有意味雑音を無意味雑音でマスキングしてみたところ、心理的印象の改善と課題作業の成績向上において効果が見られた。ただし、この実験ではマスキング音は無意味定常雑音であるピンクノイズ に限定されており、有意味雑音のBGMや変動性無意味雑音でのマスキングの効果は検討されていなかった。

今回の実験

今回は主に2つの実験からなる。まず、有意味雑音をピンクノイズ や変動音でマスキングしたときの効果を測定し、次に、マスキング音を無意味雑音に限定して変動音の影響を検討する。

実験1:有意味雑音をピンクノイズや変動音でマスキングorマスキングなし

課題作業をする際に、音声雑音を有意味雑音のBGMでマスキングした場合と無意味雑音のピンクノイズ でマスキングした場合を比較する。音声雑音はある講演から拍手や効果音、音楽を除去したものを40dBにしたものである。マスキング音は、ピンクノイズ は176.75Hz~5656Hzのものを、BGMは歌詞のないものでゆったりとした感じのものと激しい感じのものの2種類を、それぞれ34dB,37dB,40dBの3段階用意した。この3段階はS/N比*2が順に6,3,0である。
これらのノイズでマスキングした場合とマスキングをしなかった場合の「うるささ」に関する心理的印象を探った。
この実験における課題は3つの数字の加減演算で、聴覚または視覚によって数字と演算符号が伝達される。1秒ごとに1文字を伝達し解答時間に10秒とる15秒1セットの課題を5分間連続で行った。

結果

心理的印象については「音(音声雑音とマスキング音)のうるささについてどのように感じたか」を「F1:全く気にならない・F2:気にならない・F3:あまり気にならず・F4:少しうるさい・F5:うるさい・F6:かなりうるさい・F7:非常にうるさい」の7段階の中から排他的選択をさせた。加えて、「音声雑音は気になったか」をYes or Noで回答させた。
その結果、

  • ピンクノイズ でマスキングした場合としなかった場合

有意水準1%で視覚・聴覚による伝達にともに有意差が見られた。よって、ピンクノイズ でのマスキングには効果があったことがわかった。(下画像)
特にS/N比が3dBのケースで心理的印象が1カテゴリ以上改善した。

  • BGMでマスキングした場合としなかった場合

聴覚による伝達の場合にはS/N比3dBのときに有意水準1%で有意差が見られたが、それ以外では心理的印象が改善することはなかった。これより、BGMでは印象の改善は難しいことが明らかになった。

この実験における課題の成績は非常に高いものであったが(計算を高い正解率で回答した)、このことが直ちにマスキングによる効果であるとはいえない。一方で、マスキングしたことで成績が下がったわけでもないことには注意。
下画像の赤線は中の人が加えた。

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ピンクノイズ とBGMでマスキングし視覚で伝達したケース
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ピンクノイズ とBGMでマスキングし聴覚で伝達したケース

実験2:マスキング音を変動性を持たせたピンクノイズに限定or定常のピンクノイズ

先の実験1でS/N比3dBが有効なマスキングではないかということを示唆する結果を得た。そこで、無意味定常雑音であるピンクノイズ に変動幅を持たせてマスキングに用いた。 標準偏差σ=3である37dBのピンクノイズの他に、σ =5,7のピンクノイズ も用意した。なお、最大音圧レベルは、σ=3で42.0dB,σ=5で44.2dB,σ=7で46.3dBである。
手法は実験1と同じである。

結果

心理的印象については、

  • σ=0の場合(定常のピンクノイズの場合)とσ=3,5,7の場合

σ=3,5,7いずれもσ=0の場合と比べて、有意水準1%で有意差があった。

  • σ=3,5,7について

聴覚による伝達では、σ=3とσ=5の場合並びにσ=5とσ=7の場合に有意水準1%で有意差が見られた。σが大きくなるほど、つまり、signal音40dBとの違いが大きいマスキング音ほど心理的印象が悪化し「音声雑音がうるさい」と感じるようになった。これは標準偏差σが大きくなるにつれてS/N比の変動も大きくなることが原因であると考えられている。signalの音声雑音とマスキング音のS/N比が小さい時は音声ノイズが減殺されマスキング効果があるが、S/N比が大きくなるとsignalの音声雑音に対して十分なマスキングができない(いわばマスキング音が負けている)状態になり、signalがよく聴こえてきてしまう。これが心理的印象の悪化につながったと言える。
視覚による伝達の場合では、σ=5とσ=7の場合に有意水準5%で有意差が見られた。

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σ=0,3,5,7の変動性を持たせたピンクノイズ でマスキングした場合

終わり

この実験が示唆していることは、雑音を効果的に減殺するのであれば、無意味定常雑音であるピンクノイズ を減殺したい雑音とのS/N比がなるべく小さくなる様に設定するということである。
音の変動性が高いと「うるさい」と感じやすくなるというのは、見ていた動画が暗転し画面に自分の顔が映って萎えたというのと同じ様な現象であるなという感想を抱きました。

*1:単位dBで表される。 audiology-japan.jp

*2:signal-Noise ratioのこと。今回の場合、有意味雑音がSignalに、マスキング音がNoiseになる。 pabasic.com

アルツハイマーの話・続編

こんにちは。
前回、アルツハイマー患者の脳にはタウとよばれるタンパク質の異常な凝集が見られるという話を紹介しました。
ただ、前回は知らない言葉がたくさん登場したので今回はそこら辺を調べてみました。
make-a-progress.hatenadiary.jp

そもそも

アルツハイマー患者の脳

アルツハイマー患者の脳には老人斑という「シミ」とタウ・タンパク質の凝集によるNFTsが見られる。また、アルツハイマーの機序としては、アミロイドβが沈着するアミロイド病理→タウ病理→神経細胞死という流れがある。

アミロイドβ

高い集積性を示し、凝集すると神経毒性を示す。沈着すると老人斑と呼ばれるシミを形成する。認知症の最初期の特徴である。
bsd.neuroinf.jp

タウ・タンパク質

前回紹介した記事の主役。アルツハイマーの主要フェーズでは2段階目に登場する。主に中枢神経や末梢神経の神経細胞において軸索に特異的に存在する。細胞内の微小管*1結合タンパク質の1種で、異常リン酸化されると樹状突起(スパイン)に転移し神経病変を引き起こす。

アルツハイマーの機序

大きく分けて3つのフェーズ:アミロイド病理→タウ病理→神経細胞死が存在していると考えられている。このような3段階のフェーズがあるとする仮説を「アミロイドカスケード仮説」という。
細胞外にある可溶性アミロイドβが増加しプラーク(不溶性の老人斑)を形成する。それにより、タウ・タンパク質の異常リン酸化が誘導される。
可溶性のタウは異常リン酸化したことで微小管から遊離する。そして軸索からスパインに転移してSrcチロシンキナーゼ*2であるfynと相互作用しfynをスパインに局在させる。こうして高濃度化したfynは活性化し、興奮性NMDA受容体*3GluN2Bをリン酸化して安定化する。
これによって、グルタミン酸シグナル伝達が増幅し、細胞内へのカルシウムイオンの流入が増加する。これによってアミロイドβの毒性が増加する。カルシウムによって誘導されたこの毒性はシナプス後部にダメージを与えて、細胞死を生じさせる。
老人斑とNFTsは不溶性で高密度に繊維化し、神経細胞にダメージを与えて細胞死を引き起こす。
www.riken.jp
www.riken.jp
www.abcam.co.jp
ここまでの流れをざっくりまとめると、アミロイドβが増える→タウが軸索からスパインに移動→リン酸化作用を持つfynをスパイン内に増加させる→ニューロンを興奮させるNMDA受容体をリン酸化する→興奮してシグナル伝達が増大しCa2+が細胞内に流入アミロイドβの神経毒性増加
という感じ。

理研による新発見

先ほどもリンクをあげたが、理研が今年の6月にCAPONというタンパク質がタウと結合してタウ病理と神経細胞死への関与を示唆する結果を得ている。
www.riken.jp
このCAPONというタンパク質はタウと結合するのだが、ヒトアミロイド病理を再現したモデルマウスにおいて脳内でCAPONを発現させた場合、タウ病理と神経細胞死が見られた。一方で、CAPONを欠損させた場合には、脳の萎縮が抑制された。このことは、CAPONがタウ病理と神経細胞死における重要な因子であることを示唆するものである。

今回はここまで。
アルツハイマーが治る病になる日も近いかも?

*1:神経細胞内のおける物資の輸送を担当している。スパイン内では密に並びその構造を維持している。 bsd.neuroinf.jp

*2:チロシンキナーゼはタンパク質中のチロシン残基をリン酸化する。Srcは肉腫を意味するsarcomamの短縮系でがん原遺伝子である。

*3:グルタミン酸が結合するとNa+やCa2+を細胞外から取り込みニューロンを興奮させる。

アルツハイマー?

アルツハイマーについて

ネズミを使って実験
脳の糖分消費量・神経細胞の活動率・マウスがどれくらいの時間寝るか
ここでいうメタボリズムとは「代謝」のことを指す。
グルコース注射(脳に変化をもたらすため)
メタボリズムの加速・神経細胞活動の高まり・より長い時間起きていた

インスリン注射(血糖値を下げるため)
→より高い神経活動とより長く起きて活動

アルツハイマーの兆候として知られる2つのうち1つを遺伝子操作で発現させたマウスの分析
神経細胞中にアミロイドβタンパク質の固まりを持つ個体群
tauというタンパク質を神経細胞中に持つ個体群
いずれの個体群も高い血糖値と低い血糖値に異常な反応
→脳内のタンパク質がアミロイドかtauアルツハイマーに関係のあるタンパク質)かによる
アミロイドβ→高い血糖値下で脳のメタボリズムわずかに上がる
tau→高い血糖値下でメタボリズムは上がらない
いずれのケースも,神経細胞の活動は血糖に対して大きな反応をもはや返さなくなった

アミロイドβの場合もtauの場合も覚醒〜睡眠のサイクルに影響を与えているようである


www.sciencenews.org

アルツハイマーは日中の覚醒を司る脳の領域を破壊する?

睡眠障害アルツハイマー含む認知症の「一部」であって,もはや兆候ではない
・脳幹と視床下部は覚醒と注意力を司る
・通常であれば脳幹と視床下部にある3つの小領域はいずれも日中の覚醒を司る神経細胞が含まれている
・ところがアルツハイマー病で亡くなった人間の場合はtauが詰まっていた
・さらに3つのうち2つの領域では70%以上の神経細胞又はニューロンがなくなっていた
アルツハイマー病の人間が夜に寝ているのに日中疲れを感じる理由の一つはtauによる脳構造の変異
・進行性の核上麻痺や皮質基底の変異などはtauを蓄積させる
しかし,tauが蓄積されていたにもかかわらず,このような脳構造変異で亡くなった人間の死んだニューロンは少なかった
→「アルツハイマー病の場合はなぜニューロンが多く死ぬのか?」は現在研究中
www.sciencenews.org

統合情報理論??

先日この本を読んだ。

意識を発生させる原因になる情報を数学的に捉えていて「ほおー」となっていた。

話の内容は大まかにこんな感じ。

意識

定義

睡眠に落ち、かつ夢を見ることがない場合に消えるもの。
(夢を見ないくらい深い眠りの時には無くなっていて、それ以外の時には存在するものが意識だといっていると思っておけば、まぁ大体OK)

重要な脳領域

著者は意識を発生させしめているのはどうやら視床-皮質系っぽいということが主張されている。意識はニューロンの数に影響されるものではないらしいのだ。
ここで、昏睡状態と植物状態の違いを述べる。医学的に厳密な説明は避けるが、植物状態では刺激に対する反応、つまり反射が見られる。一方で昏睡とは刺激に対する反応が見られない状態を指す。

統合情報理論

命題

「ある身体システムが情報を統合する能力を有する」⇒「意識がある」
全体を読んでも「身体システムが情報統合能力を有すること」が「意識がある」ための必要条件なのか、あるいは同値なのかは断定できなかった。
ここでは必要条件として話を進める。

公理系

公理1

意識は無数の可能性の存在により支えられている。ある意識の経験というのは、無数の可能性の選択肢を、独特の方法で排除した上で成立するものをいう。
したがって、単にon/off(0/1)を表現する装置は無数の選択肢から任意の1つの選択をしていないため意識を持ち得ない。

公理2

意識の経験は統合されたものである。
意識のどの状態も単一のものとして感じられる。故に意識の基盤も統合された単一のものでなければならない。
したがって、1bitの集合体は、個々の構成要素が0or1, on/offを表現しているに過ぎず、全体が統合された単一のものではないので意識を持ち得ない。

単位と演算

情報量をΦで表す。演算に関して、次のような原則がある。

  1. システムを分解し、ある部分に伝わる情報が他の部分にも届くか否か、またその逆も成り立つかを確認する。→独立要素の集合体(個々に0or1を表現する構成要素の集合体)と統合されたものを区別。
  2. 情報量の測定には、情報がシステムの構成要素によってどの程度共有されているのかを調べる。→情報の統合に関与する最小の核を特定。

小脳

先述の原則を踏まえれば、感覚を司る小脳における情報量は大きく、意識の発生に関与していてもおかしくない。しかし、実際には小脳は意識に関与していない。
これは小脳の構造によるものである。
小脳には半球を繋ぐ神経線維がなく、また各半球内において各部位を繋ぐ線維もない。つまり小脳は独立した構成要素から成る器官ということになる。したがって、脳の場合、公理2を満たしていないのである。故に命題は偽となるので小脳は意識を持たない。

意識の観測

「意識があるとはどういうことか」を命題に落とし込むことはできたが、そもそも意識をどのように観測するのかという問題が生じる。
意識は情報の統合を経るため、単に情報量や要素の数だけでは不足している(小脳のようなケースを除外しなければならないため)。
そこで次のような原則が必要になる。

  1. 脳のあるニューロングループAに対して刺激を与え、その影響がAとは異なるグループBに見られるのかを調べる(伝播性;範囲)
  2. 与えられた刺激に対して多くのニューロンが多様な反応を示す(多様性)
  3. 刺激は視床-皮質系ニューロンに与えなければならない(刺激のアクセス)→小脳は意識に組み込まれていないため
  4. 刺激への反応はミリ秒単位で測定しなければならない(時間スケール)

これらを踏まえて、脳の視床-皮質系ニューロンに刺激を与えたときに見られる、ミリ秒単位の反応の広がり(統合)や複雑さ(情報量)を指標とする。

観測手法

TMS(経頭蓋磁気刺激法)によって大脳皮質に刺激を与える。その刺激に対する反応の広がりや複雑さを脳波計でミリ秒単位で計測する。

結果

覚醒時は、刺激に対する反応は広がりと複雑さを示す。
睡眠時は、刺激を与えた箇所のみ反応し、反応に広がりが見られなかった。刺激を強くすると刺激の反応範囲が広がるが、波形は同一単調なものだった。これは、刺激が伝播したのではなく、単に強い刺激によって衝撃が大きかったというだけである。
覚醒時と睡眠時の結果から、睡眠時は統合も情報量も著しく低下している可能性が示唆された。

なぜ?

脳が睡眠時には覚醒時に比べて著しく鈍くなる背景にはカリウムイオンの存在がある。
そもそも電気信号はイオンによって伝達されるが、正のイオンがニューロン内に入るとニューロンの活動が活発になり、負のイオンがニューロン内に入るとその活動が鎮静化する。
覚醒時にはカリウムイオンK+のニューロン内の出入りのバランスが取れているが、睡眠時にはK+が出入りする出入口であるイオンチャネルが増え始める。そのため、ある箇所では多くのK+が進入し、逆にある場所では多くのK+がニューロン外に出るということが起こり、出入りのバランスが崩れる。バランスの崩壊は、K+が多く進入したニューロンは活発になり、K+が多く流出したニューロンは鎮静化するという活動レベルの2極化が発生する。これを双安定状態という。
活発なニューロンは周囲に自分の情報を「押し付ける」ようになる。一方の鎮静化したニューロンは周囲への十分な情報伝達をしなくなる。活発なニューロンによる押しつけ以外では周囲に伝達されにくくなる情報はモノトーンになり情報量は喪失される。さらに周囲に情報を伝えようとしないニューロンが発生するため情報統合の喪失も起きる。これが睡眠時に脳の刺激反応が鈍くなる理由だと著者は言う。
ところで、このようなリスキーな現象が毎晩発生するのはなぜなのか。どうやら脳の皮質回路をクリーン化するためらしい。よくわからん。

麻酔

全身麻酔によって意識を飛ばすことができる。このことによって外科手術の多くが患者の苦痛なしに行われていることは周知の通りである。
麻酔をかけられた人間の脳波を調べてみると睡眠時と同じ波形を示す。
麻酔薬のキセノンはK+チャネルを開く効果を有しているし、ミタゾラムやプロポフォールニューロンの活動レベルを抑制するためである。

終わり。
統合情報理論は賛否両論あるらしいが、こんな感じの論文も出ている。
www.riken.jp
www.pnas.org

ブラックさん家のホールさん

これ読んだ。

ブラックホールはイオン化炭素の故郷?

イオン化炭素→銀河内で星が誕生していることを示す→生まれたばかりの星がガスを加熱することで発生
活発なブラックホール付近にイオン化炭素が大量に含まれているのに星の誕生率が低い銀河がある→ブラックホールの活動,特に強力な放射線もイオン化炭素のガスを生み出しているのでは?
→ HE 1353-1917の観測から。この銀河はジェットを宇宙空間に吹き出すのではなく自身の中心部に向けて放出している
www.nasa.gov

ブラックホールが周囲の銀河における新星誕生に影響している

99億光年離れたところにある巨大銀河のブラックホールの観測→ジェットが100万光年ほど伸びている
このブラックホールから40万光年ほど離れたところにある4つの銀河に対して
・電波ジェット中のエネルギー粒子の相互作用により加熱されたガスのホットバブル(X線源)は周囲の銀河の冷たいガスにぶつかる
・その衝撃で冷たいガスが圧縮され星の形成が始まる
・同型の銀河に比べて2〜5倍ほど新星誕生率が高くなる

・ネガティブフィードバック
ブラックホールが星の形成を妨げること。銀河の熱いガスにブラックホールのジェットかれエネルギーが供給されるとガスが星の形成が始まるレベルまで冷えない。
・ポジティブフィードバック
今回の発見のように,ブラックホールが星の形成に貢献すること。
・以前の分析では,新星誕生率30%以下,又は2万〜5万光年適度のスケールでポジティブフィードバックが見られた。
→今回はそれを遥かに上回る規模のポジティブフィードバックを示唆する結果を得られた
www.nasa.gov