奴隷制と蟻。
ゐゑ―――――ゐ!
こないだ驚きの話を見かけました。
別種のアリを襲撃して奴隷にするアリがいるらしい。
奴隷を使役するのはどうやら人類だけではなかったようです。
最も有名なのはサムライアリという種類のアリのようですが、他にも奴隷制を敷いているアリはいるようです。
サムライアリはいかにして奴隷制を敷いているのか。
奴隷となる哀れなアリはクロヤマアリというアリで、彼らの巣をサムライアリの働きアリが襲撃して蛹や幼虫を自分たちの巣に拉致する「奴隷狩り」を行います。サムライアリの働きアリは「奴隷狩り」に特化しており、強大な顎を使ってクロヤマアリの抵抗を突破します。
何がすごいって、攻撃に特化したあまり、本来の働きアリがするはずのことができなくなっているということです。例えば、卵や幼虫、蛹、そして女王の世話は働きアリの重要な仕事のはずなのですが、これができません。当然、餌を集めてくることもできません。
サムライアリの働きアリにできることは襲撃と「奴隷狩り」なのです。それ以外は奴隷なしには何もできない。すごい進化ですよね。
そもそも拉致られてきて奴隷として生きているクロヤマアリはこの状況をおかしいと感じないのでしょうか。これにはアリの特性が大きく関係してきます。
アリはフェロモンを用いて仲間か否かを識別しています。見た目ではないのです。「同じ匂い」がすれば仲間として認識してしまうのです。悲しい。
サムライアリはこの性質を利用しています。
新女王が巣を持って一城の主になろうとする際に、単身でクロヤマアリの巣に乗り込みます。まさかの女王単身でのカチコミです。クロヤマアリからすればよそ者が突然カチコミに来たわけですから、巣を守るために猛抵抗します。しかしカチコミに来た新女王は止まりません。クロヤマアリとの戦闘を繰り返して巣の宿主であるクロヤマアリの女王のもとに向かいます。クロヤマアリの女王のもとに着くと女王を咬み殺します。こうしてカチコミで勝利を収めクロヤマアリの巣を乗っ取ります。そしてクロヤマアリの女王の体表にある成分をなめとることでクロヤマアリと「同じ匂い」を身にまとい、クロヤマアリの働きアリに新女王が自分たちの女王だと思わせます。これでこの巣のクロヤマアリは新女王の奴隷になったわけです。そして卵を産みクロヤマアリの働きアリに世話をさせます。
しかし、このままでは自身で何もできないサムライアリが増える一方です。そしてクロヤマアリの女王は殺されているので巣の中のクロヤマアリは増えることはありません。奴隷であるクロヤマアリが減ってくると、自分たちの生活を守るために「奴隷狩り」の必要が生じます。つまり新たなクロヤマアリの巣を襲撃しに行くわけです。そしてこの「奴隷狩り」でサムライアリが自分たちの能力を存分に発揮し、幼虫やら蛹やらを片っ端から拉致してきます。そして拉致ってきた幼虫や蛹を育て(これも奴隷のクロヤマアリに育てさせているはず)、次世代の奴隷とします。
最後に奴隷狩りの映像を。
サムライアリの奴隷狩り
拉致って育てて使えるようになったら奴隷たちに仕事をやらせるという人間顔負けの奴隷制を持つアリ社会のお話でした。