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マニ教の本を読んだ。

ゐゑーーーーーーゐ!
久しぶりの更新ですね、書き方忘れてしまいした。
さて、今回はタイトルそのまま、マニ教の本を読んだのでその備忘録をば。
自分がわかればそれで良いので分かりにくい書き方になりますが。

読んだ本

青木健「マニ教」(講談社選書メチエ
大学の図書館で借りました。

マニ教 (講談社選書メチエ)

マニ教 (講談社選書メチエ)

宗教の内容(神話部分)

人間はどうやって造られたのか、そしてその存在意義についてを5つに分けてまとめます。

始まり:光と闇の対立(二元論的構図)

この宗教は光と闇の対立構図から始まり、これを背景として話が展開されます。
まず、光の国の偉大なる父ズルヴァーンと冥界の闇の王アフレマンがいます。そしてどういうわけか、闇チームが光チームに攻め入ってきます。神話はここから始まります。

第一回「呼びかけ」

いきなり闇チームの悪魔たちに攻め込まれた光チームは拳で抵抗することに決めました。偉大なる父ズルヴァーンは自ら陣頭指揮を取ることなく、とりあえず第一回「呼びかけ」を行って「生命の母」を呼び出します。この「生命の母」も同じように呼び出しを行い、最初の人間オフルマズド*1を呼び出します。ここでの呼び出しというのは、父ズルヴァーンの中にある光の要素から母が生まれ、同様にしてその母からオフルマズドが生まれたということであり、つまり、父とオフルマズドは「一心同体」なのです。平たく言えば自分の中の成分を抽出したものが母とオフルマズドと言えます。
さて、光チームからは最初の人間オフルマズドがエーテル(フラワフル)、風(ワード)、光(ローシュン)、水(アーブ)、そして火(アーテシュ)の5つの要素*2を以て武装し闇チームに立ち向かいました。偉大なる父と「一心同体」、分裂体も同然の彼らに光の王国の運命が託されました。
…戦いの結果、どうしようもないくらいに負けました。本当に偉大なる父由来の成分100%なのか疑ってしまいます。コストカットのために薄められたのでは? オフルマズドは残念なことに雑魚キャラだったのです。光組の敗北により5つの要素もろともオフルマズドは悪魔に食べられてしまい、偉大なる父由来の光成分は暗黒の闇に囚われることになりました。
ここから光組はなんとかして光の要素を解放しよう(取り返そう)と奮闘します。

第二回「呼びかけ」

悪魔に食べられてしまったはずのオフルマズドでしたが、いつの間にか悪魔の体外に出て冥界の底で気絶していました。
謎の力で五体満足に回復したっぽいオフルマズドは気絶から目覚め、冥界のどん底からパパに助けを求めます。ボコボコにされた上に冥界に囚われSOSを発している我が子を見て父ズルヴァーンは第二回の「呼びかけ」を行います。この「呼びかけ」で「生ける精神」ことミフル神を呼び出します。生命の母とともに救出ミッションに向かったミフル神は冥界のオフルマズドへ呼びかけを行います。この呼びかけは冥界の底まで届き、囚われ貪られたショックで色々忘れていた哀れなオフルマズドは自分の由来と還るべき場所を思い出します。自分を取り戻すことに成功したオフルマズドは冥界から光の王国へ昇天し無事帰還します。
さて、捕虜救出に成功したものの、いまだに5要素は闇に囚われたままなので、次はこれらを救出しようという話になります。5要素救出作戦はオフルマズド救出作戦で功績をあげたミフル神が中心となり実行することになりました。なお、父由来の成分100%にもかかわらず敗北したオフルマズドは「天国の主宰者」へと左遷されました。*3
早速ミッションに取りかかったミフル神ですが、やはり悪魔に食べられたものを回収することはなかなか困難なことだったようです。そこで回収ではなく、いったん悪魔を封じ込めることにします。サイコなやり方*4で悪魔を封じ込めるための空間を作り、そこに悪魔たちを片っ端からぶち込んでいきました。しかし、ここまででは光の要素を食べた悪魔たちを閉じ込めただけで光の要素の回収には至っていません。ここでミフル神は適当に悪魔を捕まえてきて体内から光の要素を回収して これができるなら残り全部の悪魔からも同様に光の要素を回収しろよ… 太陽と月、そして天の川を作ります。これは「光の船」といって、いつの日にか解放された光の要素が故郷に還ってくるための道になります。さらに風や水、火といった囚われた要素を作り直し宇宙を完成させます。作り直せるなら救出作戦要らなくない?

第三の「呼びかけ」

偉大なる父ズルヴァーンはなぜか第三の「呼びかけ」をここで行います。この「呼びかけ」に応じて第三の使者が出てきます。*5この使者のミッションは捕らえた悪魔から光の要素を外に出させることでした。この崇高な目的のために使者は、自ら考えたのか偉大なる父の命令なのかは分かりませんが、悪魔(♂)の前では全裸の処女として、悪魔(♀)を前にしては全裸の若者として登場し、悪魔たちを欲情させるという驚愕の手段を採りました。欲情した悪魔は射精(♂)ないしは流産(♀)*6させられ、光の要素は悪魔たちから解放されました。つまり、貪り食われた光の要素は解放されたものの、悪魔の精子水子として外に出てくる羽目になったのです。そしてこれらは動植物といった生き物となります。
しかし、ここまで色欲につけ込まれて好き放題やられた悪魔たちも黙ってはいませんでした。いいように光の要素を吐き出させられた悪魔たちは、光の要素を物質に囚われた状態にしようと考えます。そこで2匹の悪魔を生み出し性欲を与えました。この悪魔夫婦から生殖によって生まれたのがアダムとイヴです。アダムとイヴは繁殖手段として生殖を渇望するように仕込まれました。そう、人間の体とは悪魔たちが光の要素を閉じ込めるために作った器だったのです。そして人間は悪魔たちによって生殖を渇望するように仕込まれたため、光の要素を閉じ込める器を再生産するようになり(=生殖を通じて繁殖するということ)、その結果として光の要素が人間の中から脱出することは困難になりました。
これがマニ教において語られる生物や人間(の肉体)の呪われた誕生です。

最終決戦:人間の救済と預言者

人間は光の要素を封じ込めるために悪魔によって性欲オプションを付けられて造られた存在という事をここまで見てきました。これだけでは人間とはどうしようもない、救いようのない存在で終わってしまいます。ではマニ教における人間とは一体なんなのでしょうか。
先述の通り、人間とは悪魔によって作られた光要素封じ込め用の器であり、不純極まりないものです。しかし、人間の魂は太陽や月、天の川と同様に清純なものとされており、肉体は現世での「服」に過ぎないのです。人間はその死によって肉体を脱ぎ捨て清純な魂は解放され光の船に乗って故郷に還るとされています。しかし、納得のいかないことがありますので、脚注に書き殴ります。*7
人間は悪魔によって光の王国時代の記憶が消されているため、性欲に身を任せて現世を彷徨っているのだと考えるマニ教では、人間はどこから来たのか、そして還るべきところはどこなのかを人間たちに「呼びかける」預言者の存在が記されています。
神話ではミフル神が「叡智の世界の主」にアダムへの啓示をアウトソーシングし、これを下請けした「叡智の世界の主」はアダムに還るべき場所を啓示しました。そして自分を取り戻したアダムは世界初の使徒となりますがイヴへの宣教に失敗します。宣教相手はイブしかいないのにイヴ説得工作に失敗します。オフルマズドといいアダムといい、人間は無能枠。
イヴが性欲に負けてカインとアベルを生んだことで人間は増殖し説得工作に限界が見えたので、「叡智の世界の主」はジャンジャン預言者を送り込む必要迫られます。なんだかんだで初代のアダムから10人の預言者を送り込んだのですがことごとく失敗し、11代目の預言者としてイエスが送り込まれます。キリスト教ではここでイエスは人類の罪を背負って神に召され人類は最後の審判を待つことになるのですが、マーニーは自分を預言者に据えるために大胆な事を考えます。
それは、「マーニーはイエス使徒である」という立場をとるのです。イエスではなく、自分こそが人類最後の預言者であると言い、その事を丁寧に書物に書き記しました。これによりマーニー自身が預言者の座に着くことに成功しました。*8

ひとまず

とりあえず今回はここまで。
次回は戒律やマーニー伝説をまとめてみます。
たまに宗教に触れると楽しいよね。

*1:あろうことか、ゾロアスター教最高神と同名である。…偶然だよね、マーニーくん?

*2:これまたゾロアスター教の天使たちと同名である。…偶然ですよね?

*3:著者青木も文中で「どう見ても閑職」と書いている。

*4:悪魔を適当な数捕まえてきて、その肉体からは8つの大地を、その皮からは10の天空と1つの黄道12宮を作った。

*5:第三の使徒の名前は、ナレーサンフ・ヤザドといい、ゾロアスター教の使者の神の名前と同じである。

*6:なぜ流産なのかは謎である。妊娠に際して流産するように呪ったのだろうか。

*7:ここで納得いかないこととは、「なぜ転生しても呪われた肉体に宿るのか」ということです。マニ教では肉体は「現世における魂の服」などとされており、教祖マーニーが亡くなった際には「肉体という服を脱いだ」などと言われたそうです。「服を脱いだ」のであればそのまま光の国へ還れば良さそうです。そして、マニ教では魂は転生するとされています。生き物はどうあれその誕生の経緯から肉体部分は呪われているはずなのに、そして魂は清浄なもののはずなのに、なぜ魂の中には肉体の死後に解放されずに新たな呪われた肉体に宿るものがあるのでしょう。現世での行いが悪く魂まで「堕ちた」というのであれば話はわかりますが、その場合、「堕ちた」魂に対する殺生は許されてもいいのではないかと思うのですが。又、詳しくは次回のブログを見て欲しいのですが、聖職者を通じてのみ光の要素が解放されるのであれば、聖職者にひたすら食べさせて光の要素を取り出し続ければよく、それで救われなかったものは来世に期待すれば良いことになります。光の要素を解放し続ければいくら転生しようが光の要素を内包する生命の総数は減っていくはずです。なぜなら生物の誕生の起源と肉体の意義を考えると、悪魔側が閉じ込めた光の要素は有限で、かつ悪魔側で光の要素を作り出すことはできないはずだからです。話を戻すと、究極的には全ての生命から光の要素を救出することができ、「光の要素濾過装置」たる聖職者を増やせば殺生などを禁じる必要はないはずです。ところが、マニ教は生物が内包する光の要素を傷つける恐れがあるとして殺生などを禁じています。ここに矛盾を感じます。

*8:仏教やゾロアスター教キリスト教は書物に十分に残さなかったことで教義が一部の弟子たちによって誤解・曲解されるといった不完全性を有していた。