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マニ教の本を読んだ。2

ゐゑーーーーーーゐ!
前回マニ教の神話を紹介しました。
前回の記事はこちら。
make-a-progress.hatenadiary.jp

今回は、そんなマニ教の戒律と面白エピソードをご紹介します。今回は前回の続きなので元の本は同じです。

戒律

マニ教の戒律は、人間の使命は自らの由来を知り還るべき場所を知ることにあるという考え方に基いています。この使命を達成するために次のような戒律が定められました。

厳しい戒律:かなり禁欲主義的

殺生の禁止

殺生は体内の光の要素を傷つける恐れがあるので禁止です。同様の理由で自殺や暴力も禁止です。

性交の禁止

性交は悪魔が光の要素を閉じ込めておくために人間という「器」を再生産する手段です。tつまり人間という呪われた存在を増やすための手段であり忌避されるべきものとなります。

飲酒の禁止

アルコールは人間の意識を失わせ欲望をかき立てます。よって忌避されます。

商売以外の生業の禁止

これも最初の殺生の禁止に関連します。農業や漁業は生物を殺すことであり、これは生物の体内にある光の要素を傷つけます。したがって、物理的に傷つけることのない商売のみが許されることになります。

賛歌の唱歌
キュウリやメロン、ブドウを食べること(聖職者向け)

マニ教においては生物を傷つけることなく体内に内包された光の要素を元の場所、つまり光の国へ還すことを目指します。そして、マニ教では、なぜかキュウリやメロン、ブドウは特に多くの光の要素を内包する食べ物とされていました。そこで戒律を遵守し光の要素を「濾過」できるように体内器官が進化した聖職者たちはこれらの食べ物を一般信者からお布施してもらい、素晴らしい進化を遂げた消化器官で光の要素を濾過し光の王国へと還していたのです。光の要素の帰還事業を行っていた聖職者ですが、このキュウリもメロンもブドウも農業によって得られるものなので、彼らたくさん食べることで間接的に殺生に貢献しているのでは…という気がしないでも無いですが黙っておきましょう。

例外

本業として宗教をやっている聖職者はこれらの戒律を厳格に守ることが求められますが、宗教が本業では無い一般信者がこれらの戒律を厳格に守ることは困難です。そこで、例外を設けました。その内容とは、
・姦淫に及ばない、つまり一夫一婦制を守るのであれば結婚して良い
・自ら殺生しなければ肉食をしても良い
・賛歌の唱歌は聖職者が深夜を含む一日7回であったのに対し、一般信者は日中の4回で良い

ここが面白いぞ、マニ教

ここからは面白いなと感じたものを列挙していきます。

書物の宗教

マニ教の特徴としてあらゆる事を書物にまとめたという点があります。そのため、教祖の死後に弟子たちが整えて行くのが一般的だった教義なども彼一代でほぼまとめられました。これはマーニーが超人すぎて一代で教義をまとめ切ったことが大きいですが、この時代に書物にあらゆる事を記録していたというのは大きな特色みたいです。そして彼は創作性に優れていただけではなく、ミニアチュールの才能にも恵まれていたようで、教義と同時にミニアチュールを作成し布教に用いていたようです。
ところが!マーニーは保存性に優れない羊皮紙を用いていたこともあり、原典はほとんど残っていません。絶妙にはずしてくる。

パクリに次ぐパクリ

マニ教は様々な宗教の神話や伝説をパクりました。パラサイト宗教です。話の筋をマニ教の神話や教義に合うように適当に改竄アレンジしますが、登場人物はそのまま使いまわします。そのため、自分たちの宗教と同じだななんて安心して話を聴いていると、いつの間にかマニ教の話になっているという現象が起こります。例えば、前回の記事で紹介した神話ですが、登場人物はゾロアスター教の神や天使たちでした。こんなやり方に騙される奴なんているのかと思いますが、マーニーのもう一つの戦略と相まってマニ教は勢力拡大に貢献しました。
マニ教のもう一つの戦略、それは「有力者に取り入る」です。これによってマーニーは有力者をマニ教に回収させることに成功しました。マニ教は有力者の娘の病を治すなどして有力者に取り入り宣教の足がかりを作っていたようです。
この二つの戦略を使って勢力を築くことに成功しました。

教祖マーニーがむちゃくちゃ

彼はもともとエルカサイ教団というユダヤ教系教団に所属していましたが、ここでの儀式にこだわるやり方に不満を持っていました。そこで教団に身を置きながらこっそりと自分の教義を練り上げました。そして「自分こそイエス使徒にして最後の預言者なのだ」という結論に行き着きます。そうなると話は早くて、教団で儀式をやって農業やって…という眠たい生活を送っている場合ではありません。教団の義務でもあった農作業を「自分は預言者だ」などといってサボるマーニーを周りは許さず教団から追放しようとしました。そこに彼の父がやってきて息子に教団復帰を提案し両者の仲裁を買って出ましたが、我が子マーニーの決意を見て…

父親もなかなか

マーニーが教団から追い出されようとしている時に教団とマーニーの間を取り持ち息子に復帰を提案した父でしたが、預言者に目覚めて人類に「最後の呼びかけ」をする固い決意をしている息子マーニーを見て速攻で翻意します。そう、父は息子とともに布教の旅に出ることにしたのです。教団側からすれば「自分は預言者」などと「妄言」を吐く息子について行くなど正気の沙汰では無いと思った事でしょう。
ちなみにこのエルカサイ教団ですが、父親がマーニーを連れ込んだ教団なのです。この父親は元々女人禁制のエルカサイ教団に入っていました。そして妻が妊娠しているのにも関わらず妻を捨て教団にのめり込んでしまいます。マーニーは幼少期を母子家庭で過ごしましたが、ある時、この父がふらっとマーニーの前に現れて彼を教団に連れて行ってしまいました。この父は妻を捨て、そして妻を捨ててまでのめり込んでいた宗教を預言者を自称する息子を前にしてあっさりと捨てたのです。
そしてマーニーとその親友とともに布教の旅に出ますが、マーニーが落ち着いた頃にフラフラとインドのほうに行くなど生涯にわたって自由に生きていたようです。

終わり!

久しぶりに本、それも宗教系の本を読んだし、ブログを書きました。たまにこんな感じで動かしていきます。

ちなみになんですが、マーニーの最期は悲しくて、ゾロアスター教と縁のあるペルシア皇帝ヴァフラーム1世が即位するとゾロアスター神官団が勢力を取り戻し彼は捕らえられます。そりゃそうです、マーニーはゾロアスター教をパクるだけパクって教義に合うように「アレンジ」して自分の教えを広め宮中で存在感を示していたのです。神官団からは「内部から腐敗させる異端」と呼ばれ嫌われていました。
捕らえられた彼は牢に繋がれながら衰弱してきました。牢に繋がれた状態でも獄吏に福音を説いていたそうです。そして衰弱の果てに彼は亡くなります(病死とも言われている)。マーニー死亡の報を受けた皇帝によって遺体は切断され首は晒されました。
こうして最後の預言者は一足先に光の王国へ還ってしまいました。そしてこの後、マニ教は先述の通り、各地域で各宗教に迫害されていくのです。

以上です。