ご注文は進捗ですか?

気になったことを結論が出ないまま置いたりしています。ときどき進捗も置く。

彗星46P/Wirtanenがダストや氷、ガスを出す映像を捉えた

こんな話をみた。論文はアブストラクトしか読めないが、NASAのサイトでは概要がある程度書いてある。
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/2041-8213/ab564d

www.nasa.gov

・46P/Wirtanenがダスト・氷・ガス(彗星の尾)を出すところを捉えた
・彗星の尾が発生するメカニズムの詳細は、彗星表面が太陽光に晒されるために起こるとこれまで考えられてきたが不明だった
・46P/Wirtanenの尾の発生には明瞭な2段階のプロセス(1時間ほどの緩やかに明るくなり、その後8時間ほどさらに明るくなる)があった
・2段階目は彗星自身が放出したダストが太陽光を反射したために明るく見えたと考えられている
・観測データから約100万kgほどのダストが放出されたと概算されているが、この100万kgという数字は彗星に約20m級のクレータを作ることができるくらいの量
・尾の最高速度は800m/sに達した


今回はシンプルにまとめてみた

免疫システムと社会性行動の共進化

こんにちは。

マウスには社会性行動が見られることが知られています。そして情動障害を抱えたマウスにはこの社会性行動が見られなくなることはてんかん併発型精神障害への装薬検討の論文の回で紹介しました。
今回は、その社会性行動が免疫系とともに進化してきたのではないかというお話です。
www.nature.com
/*日本語要約版はこちら。
www.natureasia.com*/
英語版論文は課金しないと内容全てが見られないという仕様だったのでabstractのみを読みました。

マウスの社会性行動と精神障害のお話はこちらのエントリから論文に飛んでください。
make-a-progress.hatenadiary.jp

ということでいってみよー。

免疫機能に障害があると

免疫の機能障害は神経系機能や情動機能に何らかの不調をもたらすとされてきました。しかし、末梢の免疫が神経系に及ぼす影響の機構はその多くが謎に包まれたままでした。

ちょっと分かってきたこと

最近の研究で、髄膜の免疫系が空間学習や空間記憶に関係しているらしいことがわかりました。
そして獲得免疫に欠陥を抱えているマウスは社会性に欠陥を抱えているということや免疫の欠陥は前頭前皮質と深いつながりがあるということがわかってきました。(前頭前皮質は社会性行動を司る領域とされているので当然と言えば当然ですが…)

transcriptomesと社会性

マウスに代表される齧歯類の脳由来のtranscriptomesとT細胞由来のcytokineに対する細胞のtranscriptomesmの関連性は、社会性行動とIFN-γによる反応との強い相互作用を示しているということもわかってきました。
transcriptomesはある状況下において細胞にあるmRNAのことを言います。基本的にゲノムはどの器官でも同一なものですが、外部状況に呼応した時など特定の状況下において組織ごとに固有のゲノム構成をとることがあります。これをtranscriptomesと言います。
IFNにはα,β,γとあり、αとβが腫瘍細胞などに対する直接的な増殖抑制反応をとるのに対し、γは炎症反応に対する調節作用やα,βの増強作用を持ちます。
これらを踏まえた上で整理すると、齧歯類において、脳に由来する固有のゲノム構成と(T細胞由来の免疫作用を持つタンパク質)cytokineに対する細胞の固有のゲノム構成との関連性は、社会性行動とIFN-γによって引き起こされる反応との間に強い相互関係があることを示している、ということです。本来は同一なはずのゲノム構成が異なることがある、そしてその異なるゲノム構成同士の関係は社会性と免疫系により引き起こされる反応に関係性があることを示すものであると言っているわけですね。
そして抑制的ニューロンは社会性行動と投射ニューロンにおけるGABAergic(γ-アミノ酪酸)の量を増加させています。抑制的ニューロンは興奮を伝えるニューロンの出力を調整し過度な興奮を抑制する働きをしています。γ-アミノ酪酸は何かというと、これは抑制的ニューロンの伝達物質のことで、ニューロンの活動レベルを低下させる作用を有しています。*1*2

免疫システムと社会性活動の共進化

IFN-γシグナリングの作用を表す経路図(pathway)*3は社会性行動と効率的な免疫反応との共進化による関連を示します。免疫の作用を図示すると社会性行動と共進化を遂げてきたことが明らかになったわけです。
下図はT細胞受容体pathwayです。参考までに。中の人は見方がさっぱりわかりません。
www.kegg.jp
ただこの様な事例はマウスなどの齧歯類だけではなく、魚類やハエにも見られるもので、器官のtranscriptomesのメタ分析によってIFN-γやJAK-STAT*4に依存する遺伝子の発現頻度が上がったことが明らかになったそうです。

*1:bsd.neuroinf.jp

*2:bsd.neuroinf.jp

*3:array.cell-innovator.com

*4:IFNが受容体に結合することで連鎖的に活性化されて核に情報を伝える酵素のことみたいです。 www.pharm.or.jp

太陽風の神秘

こんにちは。
今日は久しぶりの宇宙の話についてです。
NASAからこんな発表がありました。
www.nasa.gov

今回はNASAの探査衛星が太陽に接近して剥がした太陽風の神秘を見ていきます。
ではいってみよー。

太陽風is何?

話に入る前に太陽風と宇宙天気について簡単に説明します。
太陽風とは太陽のコロナから放出されているガスのことをいい、主な構成要素は陽子と電子である。太陽風は電気を帯びたガス、つまりプラズマが超音速にまで加速された流れのこと。プラズマは太陽の磁力線を引っ張るので太陽風は電気のみならず磁力も有している。*1*2太陽風は太陽の自転によって横方向に回転する形で、つまりスプリンクラーのような形で放出されている。
宇宙天気とは、太陽活動によって生み出される様々な太陽風の動きのことをいう。よく知られたものとしては太陽風に伴う高エネルギー粒子線の影響で人工衛星に支障が出る現象が挙げられる。
太陽活動を解明し太陽風の動きを予想できるようになることは衛星運用やISSで活動する宇宙飛行士の安全のために重要なことである。

衛星Parker超接近

今回、NASAの太陽観測衛星Parker は太陽に約1500万マイルまで接近した。これは太陽と水星の距離(約1500万マイル)よりも太陽に近い。これだけの距離に接近した観測衛星はParkerが初めてであり、またこの時の速度は時速21万3000マイル、つまりおおよそ時速34万2800kmだった。これほど高速度で宇宙を旅した衛星は未だかつて存在していない。

明らかになったこと

Switchbacks

これは太陽風の磁気が反転する現象のこと。この現象は太陽と水星間でよく見られ数秒から数分続く現象だと考えられている。放出された磁力線がS字を描いており,太陽風の加熱・加速に関与してしているとされている。しかし,なぜこのような現象が起きるのかは分かっていない。そして,太陽風の乱流やプラズマが不安定になることで局所的に太陽の磁場・電場が変動するが,これまでの予想よりも大規模なものであるとされている。
この現象は太陽風の加熱・加速の機構を解明するヒントになるだけではなく、恒星がどのように活動し周囲の環境にどのように影響を与えているのかを解明する手掛かりになることが期待されている。

太陽の自転と太陽風

太陽の自転が太陽風に影響を与えており,プラズマ速度に驚くべき大きな方位角成分,つまり半径方向に垂直な速度が見られた。太陽風は太陽の自転に同調するようにして放出されており、太陽風の横方向の動き(砲丸投げのような感じで太陽風は放出されているということか?)は予想よりも強力で、横方向から直線方向に変化するまでも予想よりも早かった。太陽風の方向の変異点に対する理解は、どのように太陽の自転速度が時間の経過とともに遅くなるのかということを解明する鍵になる。

太陽風内のダスト

太陽から400万マイル程度の距離(!?)での観測によると、太陽風に含まれるダストは太陽から約700万マイル離れたあたりから薄くなっていくことが明らかとなった。このことは約1世紀にわたり理論的には唱えられてきたが、今回それが観測で裏付けられた事になる。そしてこのダストは太陽に近いと高温になりガス化し、太陽の周囲ではダストはガス化して無くなっていると考えられてきたが,今回はこのダストフリーな領域の存在を示唆する結果を得たことになる。ダストフリー領域の存在に関する詳細は来年に行われれる予定のParkerの6度目の接近観測で明らかになるだろう。

エネルギー粒子

観測によると、太陽から放出されるエネルギー粒子の痕跡は地球に届く前に無くなっていることが明らかになった。さらに重い元素において特に高い割合で粒子バーストが観測された。これらの太陽から放出されたエネルギーイオンや元素は太陽磁場に沿って動くため,移動速度の速い粒子と遅い粒子に対するParkerの捕捉時間の差を利用して粒子の軌跡の距離を見積もることができる。この軌跡は予想よりも長く,太陽磁場もより複雑であろうと考えられている。
太陽から放出されるエネルギー粒子は宇宙天気の大きな要因であるので、エネルギー粒子の放出について理解することは衛星で活動する宇宙飛行士をより安全下に置けるだけではなく、宇宙天気の観測にも重要である。

終わり。
今回の発見は、「太陽にめちゃくちゃ接近してみたら太陽風の磁気の反転とかダストの薄くなるところとか明らかになったよ」というお話です。一番近い恒星太陽、実はわからないことだらけだったり。

社会脳:自他の境界形成

こんにちは。
今回は意識に関して、社会は脳のどのネットワークに由来するのか、そして脳内にあるネットワークが自意識にどのように関わっているのかというお話。
「社会脳」という言葉を初めて聞きました…
今回の論文はこちら。
www.jstage.jst.go.jp
ではいってみよー。

意識のNCC問題

「意識のNCC(Neural Correlates of Consciousnesses )問題」とは、文字通り「意識の形成には脳内の特定領域が関与するのか」という問題のこと。
社会脳においては、意識とは「社会的意識形成を担う複雑なハブ的役割を果たすネットワークが相互作用することで生成されるもの」と考えている。
では「ハブ的役割を果たすネットワーク」とは何を指しているのか。それは次の2つのネットワークである。

  • 認知性ネットワーク:代表的なものにワーキング・メモリ・ネットワーク(WMN)
  • 社会性ネットワーク:代表的なものとしてデフォルト・メモリ・ネットワーク(DMN)

WMN・DMNについては次の項で説明する。

脳内ネットワーク

社会性ネットワークとしてのDMN

そもそもDMNはある目標のために意識的な活動をしていない状態で働いている脳のネットワークのことを指す。このDMNは主に脳の内側領域が連携して形成されている。脳の内側領域とは、内側前頭前野(MPFC)、後頭帯状回(PCC)、楔前部(Precuneus)、後部頭頂小葉(IPL)などがある。DMNを形成するこれらの領域は心の理論課題*1などで活性化する領域と重なっている。したがって、社会性ネットワークと名付けている。

認知性ネットワークとしてのWMN

WMNは、ある目標のために課題解決を行う際に働くネットワークのことである。DMNと異なり、目標志向的で、外部からの情報を得て、注意の焦点化などを意識的にコントロールするように働く。このネットワークは、背外側前頭前野(DLPFC)、前部帯状回(ACC)、後部頭頂葉(SPL/IPL)など主に脳の外部領域が連携することで形成される。

DMNとWMNは競合的な関係にあるが、その競合的作用が協調的にも働いている。

社会的意識の形成

社会的意識の形成には、DMN・WMN・背側注意(DAN)・顕著性(SN)・感覚運動・視覚・聴覚などのネットワークが競合・協調して社会性意識を形成している。
WMNは外部との情報のやり取りが伴うため、感覚運動や視覚、聴覚とはより協調的な関係にある。また顕著性はDMNとWMNを調整していること考えられている。

ヒト固有の意識

脳のネットワークから意識が発生する説明ではヒト固有の意識については説明し切れていない。そこでヒトに固有の意識において鍵となるのは、

  • WMNの再帰的機能
  • WMNからDMNへの大域的な再帰性
  • SNのような調整役

である。キーワードは「再帰性」ということになる。
自己の認識というのは「他者から見た自己」を通じてなされている。この対置関係により獲得される自己は再帰的自己というべきものである。他者を通じて自己を認識するとうことは自己意識、つまり自他の境界は他者を認識するところから形成されるということを意味している。したがって、前頭前野*2が未熟なためワーキング・メモリが十分に発達していない乳幼児は自己意識が希薄であると言える。

自他の境界

乳幼児から5歳児あたりまでの自己意識の発達についてみていく。
・2ヶ月くらいの乳幼児:自分の目の前で手を動かしそれを見るハンドリガードという行動をとる。これは動かした手が自分の身体の一部であるという認識(身体保持感)や自身の身体を自分で動かす運動主体感を身につけると同時に、自身と外部を分離する社会性認識の準備をしていると考えられている。
・〜2歳くらい:鏡に映る自分を自分だと認識する鏡像認知ができるようになる。
・3〜4歳:自己意識情動の芽生え。自己に対する「恥ずかしい」という情動を他者の目に映る自己を通じて感じるようになる。これが「再帰的自己」である。このように他者を通じて自己を再帰的に評価できるようになることで自身の行動をモニタリングできるようになる。そしてこのモニタリング機能がWMNへと発展していくのである。
・5歳くらい:心の理論課題や誤信念課題(False Belief Test:FBT)*3をクリアできるようになる。つまり、他者の心を類推して理解できるようになる。これは明確な自他の区別の始まりであり、この自他の区別がやがて社会の中で自己を位置付けることにつながっていく。自他の区別の始まりあたりまでは認知性ネットワークが社会性ネットワークに先行している。小児期は目標志向的に自他を区別していることになる。小児期は様々なものが新鮮で外部環境から多くのことを学習しているということを踏まえれば当然であろう。

志向的意識と社会性ネットワーク

他者の心を推定するDMN(心の理論ネットワーク)の水準としては次のようなものがある。

  • 1次志向性:「Xは、…と思う」→この程度であれば、再帰性が弱くても内容を理解することができる。
  • 2次志向性:「Xは、『Yが、…と考えている』と思う」→2次の場合、入れ子構造となり再帰性が必要になる。

3次以上の場合、入れ子構造がさらに深くなっていくので内容を理解するためにはWMNの再帰機能が必要になる。
つまり、1次であればDMNで対応できるが、2次以上の場合は入れ子構造になるため再帰性が必要になる。したがって、推定する他者の意識が1次ではDMNを、2次以上の場合はWMNの再帰性機能も動員していることになり、このことが2次以上では社会性ネットワークとしてのDMNを抑制していると言える。この抑制を切り替えと見ればDMNとWMNは協調的関係にあると捉えることもできる。
ちなみに成人の場合はワーキング・メモリの制約上、入れ子構造の情報を操作・保持できる次数は4が限界と言われている。

終わり。難しいこの分野…

*1:他者の心を類推し理解する能力を測るテストのこと。

*2:ワーキング・メモリを司る領域。社会的行動にも関与しているため、ヒトがヒトたるために不可欠な部位。 bsd.neuroinf.jp

*3:心の理論課題の1つ。他者の心や信念が自分のものと異なることを認識できるかを測るテスト。例えば、被験者に対して次のようなシチュエーションを設定して質問を投げる。Aが赤い箱におもちゃをしまい退室した後にBがそのおもちゃを赤い箱から隣にある青い箱に移した。そしてそのことを知らないAが部屋に戻ってきておもちゃを取り出そうとするとき、Aは赤の箱を開けるか青の箱を開けるか。これに赤と答えた時、被験者はAの状況を自身の中に投影できていると判断される。

視柄腺と生殖に関するホルモン

こんにちは。
今回もタコの話です。読んだ論文はこちら。
www.jstage.jst.go.jp

視柄腺については、タコの母性に関わっているらしいという話を『タコの教科書』で見ました。その時のエントリがこちら。
make-a-progress.hatenadiary.jp

で、今回の論文はその視柄腺とホルモンの関わりを調べたというところです。では。、いってみよー。

前提

タコなどの軟体動物の話に入る前に、脊椎動物の性成熟について見ておく。
脊椎動物の性成熟は視床下部-脳下垂体-性腺軸によって制御されている。視床下部から性腺刺激ホルモン放出ホルモン(Genadotropin)が分泌され、それが脳下垂体に作用し性腺刺激ホルモン(Genadotropion-Releasing Hormone:GnRH)が分泌される。例として卵胞刺激ホルモンや黄体形成ホルモンがある。そして、GnRHが性腺に作用して性ホルモンが分泌される。

メラトニンと生殖腺

鳥類においてメラトニンが性腺刺激ホルモン抑制ホルモン(Genadotropin Inhibitory Hormone)の産生を促進していることがわかっている。このメラトニンは光刺激によって産生が調節されており、光刺激が強ければメラトニンはより産生されるので性成熟は抑制される。

神経の構成

盲目と生殖器官の発達

タコを用いた光刺激と性成熟の制御に関する実験がWellsらによって行われており、その成果が1959年に発表されている。
未成熟の雌ダコの視索や視神経を切って盲目にしたところ、卵巣が切断前に比べると5週間で100倍近くに成長し体重比で1/500から1/50まで発達した。雄タコについても雌ほどではなかったがやはり生殖腺が発達した。
一方で視柄腺を切除すると雌雄ともに生殖腺の発達は見られなかった。そこで視柄腺は生殖腺の発達に関与しており、脊椎動物の脳下垂体に相当すると考えられた。
そこで、視柄腺と光刺激の関係を調べるために次のような実験を行った。
そこで4パターンの切断・除去を実験した。

4パターンの実験

実験ではタコを盲目にするにあたり、4通りの処置が取られた。

  1. 視索を脳と視柄腺の間で切る
  2. 視神経が到達する脳下脚葉という箇所を切除
  3. 視索を視柄腺と視葉の間で切る
  4. 視神経を視葉と眼球の間で切る

この結果、いずれのケースでも生殖腺の発達が見られた。
片側のみの切断であっても、視柄腺が切られた側でのみ発達し切られなかった側では変化がなかったことから、視柄腺の発達は神経性調節によるものと判明した。

神経の走り方

神経の走り方としては、視神経は視葉→視索→脳下脚葉に入る。この神経は視索から視柄腺に直接入らない。脳下脚葉から出る視柄腺神経は脳下脚葉→視索→視柄腺へと入る。よって、光刺激は視神経で受容したのち、視葉→視索→脳下脚葉に至り、光刺激により活性化された視柄腺神経を通じて視柄腺へと至る。そして刺激が強ければ生殖腺の発達は抑制される方向に働くということになる。
この視柄腺は星状細胞と支持細胞、そして密集した血管によって構成されている。星状細胞は成熟すると未成熟時の約10倍の大きさになる。この視柄腺は2つのシナプスを持っている。それが軸索間をつなぐシナプスと軸索と腺細胞をつなぐシナプスである。しかし、成熟すると軸索間をつなぐシナプスは消失することがわかっている。
これより、軸索間をつなぐシナプスによる成熟に抑制的な神経と軸索と腺細胞間をつなぐシナプスによる成熟を促進する神経の存在が示唆されたことになる。
また、活性化した視柄腺から抽出した成分を試験管内で卵巣に作用させると濾胞細胞においてタンパク質の合成を始めた。これによって視柄腺に由来する性腺刺激ホルモン放出ホルモンの存在が示唆されたことになる。

視柄腺を染色する

前提として、コウイカの視柄腺を支配する神経は、軟体動物によく見られるFMRFamideの抗体で染色可能であるという事実がある。

oct-GnRH

前提をもとに、Di Cosmoらはマダコを使って、FMRFamideの抗体とchicken GnRH-I抗体を用いて視柄腺と視柄腺を制御する領域を免疫染色した。
その結果、FRMFamideに対しては、陽性反応を示した細胞が脳下脚葉に存在し、視柄腺神経に陽性シグナルが見られた。FRMFamideはカイコの脱皮ホルモンの合成を抑制することがわかっている、いわば抑制に働く物質である。*1
一方、chicken GnRH-I抗体に対しては、陽性反応を示した神経は後嗅葉から視柄腺にかけて見られ、腺細胞周辺に神経終末があった。
以上の結果から、視柄腺はFMRFamide抗体に陽性を示す神経とchicken GnRH-I抗体に陽性を示す神経によって二重の支配を受けていることがわかった。
著者らはテナガダコとマダコを使って、脳に含まれる活性ペプチドを調査した。その結果、心拍の増強に顕著な活性を示すペプチドは脊椎動物のGnRH構造に共通している特徴を有していることがわかった。
タコは12残基のペプチドを有していて、著者らはこれをoct-GnRHと名付けた。このoct-GnRHの前駆体は脊椎動物のGnRH前駆体と構造が同じであった。
そこでこのoct-GnRHに対して免疫組織化学による観察並びにin situ hybridization実験を行った。免疫組織化学による観察では、脳下脚葉に陽性の繊維と細胞が存在し、視索にも陽性を示す神経が密に見られた。これは脳下脚葉から視索にかけてoct-GnRHが存在することを意味し、脳下脚葉においてこのホルモンが分泌されている可能性を示唆している。in situ hybridization実験では前駆体mRNAの発現を示す細胞体が脳下脚葉に見られた。
また、oct-GnRHは卵管と卵管球にも陽性反応を示す神経が存在しており、卵管の自動収縮を増大している。
この様に脳下脚葉などから分泌されている感じがしていたのだが、視柄腺を見てみると星状細胞の細胞質内にもoct-GnRHが見られた。これはoct-GnRHが視柄腺によって分泌されている可能性を示している。
が、しかし、この問題もタコの細胞構造を考えると解決しそうである。というのも、タコの星状細胞には粗面小胞体や分泌小胞がない。そして、観察によって、oct-GnRHは細胞内に取り込まれたのち、蓄積されてやがて血液中に放出されることが明らかになっている。この事実からoct-GnRHは星状細胞内で分泌されたものではないと言えそうである。
Di Cosmoらによると、雌雄のマダコの生殖腺には、プロゲステロンや17β- エストラジオール、テストステロン、性ホルモン結合タンパク質などが存在していることが明らかにされている。プロゲステロンは雌の貯精嚢内の精子を活性化する役割を持っているとされており、また精子の先体反応を誘導していると考えられている。この貯精嚢周辺においてもoct-GnRHの陽性反応が検出されている。

結論

これらの観察と実験を踏まえると、生殖腺の成熟には脳下脚葉-視柄腺-生殖腺/後嗅葉-視柄腺-生殖腺のラインが脊椎動物でいう視床下部-脳下垂体-生殖腺のラインと同様の役割を果たしており、oct-GnRHはこのラインにおいて重要なホルモンであることがわかる。
特に脳下脚葉へ強い光刺激が需要されると視柄腺に抑制的な働きを引き起こさせ、生殖腺の発達が抑制されるということでした。性成熟の抑制に視柄腺が関与しているのならば交接後のメスの視柄腺を除去すると交接前(成熟前)と同様の行動を取る様になるということも納得が行きますね。

てんかんに伴う精神症状に対する効果的な薬とは…

こんにちは。
今回はてんかん併発症の精神症状に対する効果的な薬を検討した論文を読んだお話です。
わからない言葉だらけでしたが、自分なりに噛み砕いてみました。また、精神症状に対する薬の検討までを今回は紹介し、情動機能障害のメカニズムの解明に関する検討は省略します。
医学的に正しく咀嚼されていることを保証するものではありません。
読んだ論文はこちら。今年出されたものです。
www.jstage.jst.go.jp

概要

この論文は、実験マウスを用いて行ってきた、てんかんにより誘発される精神症状の研究とその治療薬の検討について述べている。
実験によりてんかんが協調運動や運動記憶、長期記憶、情動機能及び社会性行動に影響を与えている可能性が示唆された。また、てんかんと併発する精神症状についてα4β2ニコチン受容体作動薬が症状を改善する可能性についても述べている。

実験内容

モデルマウス

今回の実験にはモデルとしてキンドリングモデルと対照(vehicle)群を用意した。キンドリングモデルはてんかんを患ったマウスである。
このキンドリングモデルには非競合的なGABAA受容体拮抗作用のあるペンテトラゾール(pentylenetetrazole: PTZ)を投与*1し、対照群には生理食塩水(Saline)を投与した。

てんかん動物の主な症状

てんかん動物に見られる主症状は痙攣である。これにより自発運動量の低下や筋力の低下が引き起こされる可能性がある。そこでこれらの低下が見られるのかを次の実験で調べた。

3つの実験

自発運動量や筋力の低下が見られるか否かを次の3つの実験で調べた。

  • Open Field Test:OFT

探索行動など自発的行動を調べるための一般的な実験。

  • Muscle Relaxation Test:MRT

具体的に何をしたのかはわからないが、いわゆる筋力テスト(ワイヤハングテストなど)を行ったものと思われる。

  • Rota-Rod Test:RRT

回転する棒の上にマウスを乗せて運動能力を調べるための実験。

この結果、OFTとMRTにおいては、キンドリングモデルと対照群の間に有意差は見られなかった。したがって、てんかんによる自発的運動量や筋力の低下は見られなかった。
RRTでは有意差が見られ、キンドリングモデルは落下時間の短縮が見られた。そのため、てんかんにより協調運動や運動学習上の障害が引き起こされている可能性が示唆された。

論文にある実験以外でマウスに対して行われる様々な実験はこちらを参考。*2

てんかんが記憶に与える影響を調べる

2つの実験

てんかんが記憶に与える影響を調べるため次の2つの実験が行われた。

  • Y-maze test*3

短期記憶について調べるための実験。マウスをY字型の迷路に入れると直前に探索したアームとは異なるアームに進もうとする性質を利用したもの。
実験の結果、短期記憶の評価指標Spontaneous Alternationについて両群に有意差は見られなかった。つまり、短期記憶においては健全なマウスと差がなかった。

  • Novel Objective Location Test:NOLT*4*5

長期記憶を調べるための実験。マウスが見たことのないものに対して時間をかけて探索する性質を利用したもの。マウスが入るフィールドの中に物体を複数配置し、その後物体の配置を変える。そこにマウスを入れると、前回探索の記憶が残っていれば配置が変わっているので時間をかけて探索を行う。これを以てマウスの記憶保持能力を評価する。
実験の結果、対照群が記憶を保持していた物体配置条件においてキンドリングモデルには有意な探索時間の延長が見られなかった。つまり、異なる配置に対して元の配置と同じリアクションをとったということ(=前回配置の記憶を保持できていないということ)で、このことは長期記憶についてはてんかんがネガティブな影響を与えていることが示唆された。

ここまでの結果

てんかんは、

  • 自発的運動量や筋力の低下は起こしていない
  • 協調運動や運動学習の障害を引き起こしている可能性がある
  • 長期記憶能力の低下を引き起こしている可能性がある

ということがここまでの結果。

てんかんが情動機能に与える影響を調べる

2つの実験

てんかんが情動機能にどのような影響を与えるのかを評価するため、次の実験を行った。

  • Forced Swim Test:FST

水を張った容器やチューブのなかにマウスを入れる。しばらくは水から脱出しようともがいているがやがて諦めて動かなくなる。鬱などのネガティブな感受性の測定に用いる。平たく言えば、助けもこない絶望的な環境に放り込んだらどのくらい足掻くのかをみる。鬱傾向が強ければ何もしない時間が長くなる。
実験の結果、両群において動かない時間(不動時間)に有意差は見られなかった。
そこでキンドリングモデルに神経物質を輸送するトランスポーターの阻害薬であるブプロピオン*6やアトモキセチニン*7を投与したところ、低容量の段階で不動時間の短縮が認められた。
この結果より、てんかんマウスの鬱症状自体は変化していないが、神経物質を運搬するトランスポーターがてんかんにより何らかの影響を受けている可能性が示された。

  • Elevated Plus Maze Test:EPMT

高所に十字形の通路があり、うち2本のアームには壁が、残りの2本は壁なしの通路のみとなっている装置を用いる。マウスが高所に対して不安や恐怖感を示すことを利用し、不安の感受性の測定を行う。
実験の結果、壁なしのアームへの進入回数・滞在時間がキンドリングモデルにおいて有意に増加した。このことはキンドリングモデルの不安の閾値が上がっていることや不穏症状*8に近い状態にあることを示唆している。

f:id:SyuchiNikuRing:20191202230725p:plain
elevated plus maze(wikiより)

てんかんが社会性行動に与える影響を調べる

次に社会性行動への影響を調べるために次のような実験Three chamber Social Testを行った。
なお、健全なマウスは空部屋又は会ったことのあるマウスのいる部屋と見知らぬマウスがいる部屋を示されたとき、見知らぬマウスの部屋により長い時間滞在する。

  1. 空部屋と見知らぬマウス(stranger1)のいる部屋を示される

この時、対照群はマウスstranger1のいる部屋により長く滞在したが、キンドリングモデルは両部屋の滞在時間に有意差は見られなかった。

  1. 先の実験で会ったマウスstranger1のいる部屋と見知らぬマウスstranger2のいる部屋を示される

対照群はstranger2のいる部屋により長く滞在したが、キンドリングモデルには両部屋の滞在時間に有意差は見られなかった。
これによりてんかんにより社会性行動に影響が及ぼされていることが示唆された。

併発した精神症状に対する薬を検討する

てんかん患者には、てんかんによる情動障害として自閉症ADHDを併発する傾向が見られる。自閉症には皮質下のα4受容体の発現が低下していることという報告がなされている。ADHDについてはα4β2ニコチン受容体作動薬が奏功した事例が報告されている。そこでキンドリングモデルにα4β2ニコチン受容体作動薬であるABT-418を投与しその影響を調べる。

  • RRTでの効果

キンドリングモデルの落下時間が短縮は用量依存的にかつ有意に改善した。

  • EPMTでの効果

壁なしのアームへの滞在時間が対照群に比べて有意に長かったが、これが改善された。

  • TCST

実験1/2ともに社会性行動に改善が見られた。
以上により、α4β2ニコチン受容体作動薬ABT-418にはてんかん併発型の精神障害に奏功する可能性が示された。

というお話。

*1:PTZは痙攣誘発薬のこと。要はてんかんの症状を誘発させる薬。 plaza.umin.ac.jp

*2:www.fujita-hu.ac.jp

*3:muromachi.com

*4:www.sophia-scientific.co.jp

*5:同様の実験Object Recognition Test:ORTの映像www.jove.com

*6:抗うつ薬の一種

*7:ADHD薬の一種

*8:下記サイトによれば、『患者が穏やかな状態でないこと、あるいは興奮することが予測できる状態にあること』を指す。 www.almediaweb.jp

タコの隠れ家選びと色。

今日からJSTでは12月です。今年も残すところあとわずかになりました。
そして12月といえば…そうです。アドベントカレンダーです。
今年も1人アドベントカレンダーをやろうかなと思っています。何をテーマにやろうかなと考えたのですが、読んだ論文をざっくり要約して気になった点を調べてみるというのを今年のアドベントカレンダーのテーマにしようと思います。
今回はタコの話ですが、今後は遺伝子工学と癌治療だとか意識の話だとかが増えていくと思います。
ということでこれまでと何一つ代わり映えしませんが、やっていきたいと思います。
ではいってみよー。

スナダコには視覚があるのではという研究について以前載せたが、今回はタコの隠れ家選びに背景の色は関係するのかという研究のお話。
www.jstage.jst.go.jp

タコの視覚に関する以前のエントリはこちらから。
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概要

今回の実験は色覚を持たないマダコと色覚を持っているであろうスナダコを対象に、異なる色の実験水槽に対して異なる色の隠れ場を設置して色の選択性を調べたものである。
結果は背景色と選択された隠れ家の色に関係はなかった。背景色に関係なく、黒や赤、橙を選ぶ傾向が認められたのだが、これはマダコ・スナダコともに暗く見えた色を選択したものと考えられる。網膜感度のピークなどから黒や赤、橙はマダコにとっては濃いグレーに、スナダコにとっては暗い褐色や褐色に見えているはずだと考えられているためである。
この実験で見られた特異的な点は、スナダコが背景色と同色の隠れ家を選んだケースが見られたことだ。赤や橙、黄色のケースでこのような結果が得られたが、このうち赤や橙は網膜感度で説明できる。黄色については、網膜の光受容感度の違いで説明が試みられている。つまり、スナダコの光受容感度の帯域はマダコのそれより狭いか短波長寄りにあり、黄色素材から受容される光エネルギーはごくわずかなもので非常に暗く見えていると可能性があると考えることができるというものだ。

手順

  1. マダコ10匹とスナダコ14匹に対して、1個体ずつ実験水槽に入れる。
  2. どの隠れ場に入っているのかを9時から18時までの間30分間ごとに記録する。
  3. 両種の隠れ場の選択頻度について、隠れ場の色の違いで有意差が見られるのか否かを背景色ごとに分散分析により検定する。有意差が見られたものについてはTukey-testによる多重比較を行った。

背景の色は黒・赤・橙・黄・緑・青・白で、隠れ場の色は黒・赤・橙・黄・緑・青・白・透明である。
低照度における実験の背景色は黒・青・黄の三色としている。

なお、実験では環境の照度の違いによる波長認識の差が生じる恐れがあるため、高照度と低照度の2つの環境を用意している。これは頭足類がもつ視細胞が感桿型と言われるタイプであり、purkinje shiftという現象を起こす可能性があるからである。purkinje shiftとは低照度になるにつれて長波長側に波長認識が移っていく現象をいう。つまり、暗くなるにつれて赤に近い色ほど感度が上がっていくということ。

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色の波長*1

結果

照度別の結果

  • 高照度下での実験

マダコ・スナダコともに、
隠れ場の外にいる場合→動き回るor腕を反り上げて胴部を隠すようにして静止
隠れ馬の中にいる場合→身を隠すようにして静止

  • 低照度下での実験

マダコ・スナダコともに、
隠れ場の外にいる場合→ほとんどのケースで腕を広げて静止
隠れ場の中にいる場合→身を隠すようにして静止し眼球部だけを隠れ場の外に出す
なお、隠れ家の外にいたケースと中にいたケースの比率は、
高照度下のマダコで446:485,低照度下で290:109,
高照度下のスナダコで443:488,低照度下で281:118となった。
したがって、低照度下における場合の方が隠れ場の要求は低いということになる。
なお、照度によって値が大きく異なるのは、高照度での実験と異なり低照度での実験において背景色を3色としているためである。

両種の色選択

マダコの高照度での色選択は黒が最多で赤・橙がこれに続き、低照度では黒・橙・赤の順となった。スナダコは、高照度では黒・赤・橙の順に多く、低照度では橙が最多で黒・赤がこれに続く結果となった。
背景色ごとの隠れ場に入っているケースの頻度から、色選択は背景色ごとにランダムになされており、隠れ場と背景色に関連性は見られなかった。

分散分析にかけてみる

有意水準をp=0.05とし、背景色ごとのFを求める。なお、F_0.05=2.21である。
マダコの高照度下の黒はF=4.89,黄はF=8.02であり、有意差があった。
同様にしてスナダコでは赤はF=3.22,黄はF=3.73であり、有意差があった。
そこで、これらの背景色を多重比較にかけてみる。

多重比較してみる

マダコは背景色が黒のとき隠れ家の色が黒のケースの頻度が最も高かった。
他の色との間のq値(間違いをどの程度許容するかを表す値)がいずれもq_0.05境界値を上回った。黄の場合も同様の結果となった。
つまり、マダコは背景色が黒・黄において隠れ場の色が黒となる色選択の頻度が有意に高い。
スナダコは背景色赤に対して隠れ場の色が黒となる色選択のケースでいずれの色との間のq値を上回った。黄の場合も同様である。
したがって、スナダコは背景色が赤・黄の場合において隠れ場の色が黒になる色選択の頻度が有意に高い。

考察

論文によれば、両種とも背景色に関係なく黒・赤・橙の隠れ場を選択する傾向がみられた。マダコは色覚がないとされており、その網膜感度は475nmにピークがあるとされている。したがって、マダコにとって赤や橙は濃いグレーに見えているはずである(下図の人間に当てはめるとA型?)。
一方のスナダコは色覚を有する可能性が指摘されているが、一般的にタコは長波長色に対する感度が低いとされている。そのため、スナダコにとって赤は暗い褐色に、橙は褐色に見えていると考えられている。(人間に当てはめるとP型とD型にちかい?)
以上より、タコの色選択は、特定の色を認識して隠れ場所を選んでいる可能性や背景と隠れ場のコントラストを元に色を選択している可能性は低く、暗く見えている隠れ場を選択したものと考えられる。

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参考資料:色盲者(A型)の見え方*2

スナダコの特異性

今回の実験において、スナダコに特異性が見られたという。それはスナダコの色選択では背景色と同じ色を選んだケースが見られたということだ。
黒や赤の選択は網膜感度により暗く見えていることから説明されるが、黄色については光の受容感度から説明を試みている。
430nm~650nmにおいて5nmごとにマダコの網膜感度曲線と各色の値との積分値をとり、白と網膜感度曲線との積分値を1として他の色を比べると、黒は0.05,赤は0.08,橙は0.12となり、マダコはこれらの色をほとんど受容していない。これに続く色は黄だが橙に比べて約2倍の0.23で次に大きい青の0.29と比べて低いといえる値ではない。これは、黄・青・緑がマダコにとって比較的明るく見えており、反対に黒・赤・橙は暗く見えていることを意味し、隠れ家として暗く見えている色が選択された結果に一致する。
黄色の波長とスペクトルの関係図を見ると500nm~550nmで急激に変化していることがわかる。もし仮に、スナダコの光受容感度がマダコのそれよりも狭い領域にあるか短波長寄りにあるならば(一般にタコ類は長波長の受容感度が低いため)、スナダコの黄色の受容はわずかなものになり暗く見えていることになる。したがって、この仮説のもとではスナダコにとって黄色もまた暗い色として認識されることになる。

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マダコの網膜感度と色の波長及び反射率(論文より)

*1:大阪大 石島研 www.fbs.osaka-u.ac.jp

*2:cud.nagoya